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妹の思い出。

IMG_7706.jpg 編集部に妹から電話があった。あたしが携帯をマンションに忘れたので、編集部にかけたのだった。

「一応、安否確認でーす。池袋のパルコから飛び降り自殺があったでしょ。30代、女性、精神病院に入院歴ありって、ニュースでやってたから、お姉ちゃんかと思って(笑)」。

「ありがと。あたしじゃないよ。ピンピンしてる」とあたし。

 編集部の仲間たちは、奇人変人が多い。妹の電話の内容を話したら、ゲラゲラ笑っていた。

IMG_7709.jpg 妹からもらった誕生日プレゼントで、いまでも大事にしているものがある。ウータンと名付けたオランウータンのぬいぐるみだ。

 池袋のタバコ屋兼ぬいぐるみ屋のショーウィンドーに飾ってあったものだ。あたしは、誕生日近くなったら、買うんだと妹に何気なく話していた。

 仕事でバタバタしていて、結局買いに行けたのは、誕生日当日。ショーウィンドーには、もういなかった。あたしは、がっかりして、ひさびさに実家に帰ると、自分の部屋の入口に誕生日カードを持ったぬいぐるみが置いてあった。

「お姉ちゃんへ。いつ売れちゃうかも知れないので、先回りして、買っときましたら。大事にしてね。誕生日、おめでとう」。

 妹は勝ち気な反面、やさしくて、おちゃめなところがある。7800円もする、ぬいぐるみを買って、部屋にこっそり置いてくれたのは、ありがたかった。

 タバコ屋兼ぬいぐるみ屋のショーウィンドーには、今度は色違いのピンクのオランウータンが飾ってあった。ウータンの恋人にしようと思って、あたしも大枚を払って、買った。

 また次の日には、今度は色違いの白いオランウータンが飾ってあった。タバコ屋兼ぬいぐるみ屋のおじさんに、「もう色違いはないですよね」と聞いた。「もうないよ、それが最後」とおじさんは言った。

 今度は、ピンキーと名付けたピンク色のオランウータンのお兄ちゃんにしようと思って、また7800円払って買った。サミーと名付けた。もし、七色も種類があったら、破産してるところだった(笑)。

 子供の頃、風月堂のゴーフルが好きだった。まだ、残りがあったのに、缶を開けると、「ごちそうさまでした」という紙だけが入っていた。

 がっかりして、妹に「あんたでしょ、食べちゃったの!」と怒ると、「冗談でーす。この袋に残りが入ってるよ。全部食べていいから」と笑っていた。

 あたしが編集部で働いている時に、母から切羽詰まって、電話があったことがある。母は、講談社から近い不忍通りで、バイクと軽い接触事故を起こして、講談社の隣の大塚警察にいたのだ。

 すぐに大塚警察に行くと、母とバイクを運転していた、あんちゃんがいた。少し遅れて、妹が来て、「まだ、謝ってないでしょうね!」とすごい剣幕だった。

 交通事故は謝ったら負けだということは知ってるけれど、被害者であるあんちゃんの前で言うなんて、妹も相当勝ち気だった。

 あんちゃんもケガはなかったし、防犯カメラで見ても、どちらが悪いとも言えないので、事なきを得た。警察で、もろもろの手続きをしている間に、高校野球のポスターをあんちゃんとあたしで見ていた。

「おれ、高校野球をやってたんですよ。ピッチャーでした。でも、重圧からのストレスで、過敏性腸症候群になって、高校を中退したんです」と言っていた。

「あたしも、過敏性腸症候群よ。ライター兼編集者だから、ストレスが多くってさ。お腹が痛くて、困っちゃうよね(笑)。高校野球かぁ。重圧で本当につらかったんだろうね」となぐさめた。

 ある日、家にあんちゃんから電話があった。事故を起こした日はバイトがあった日で、遅れたためにクビになったと言っていた。

「妹さんのことは、許せないんですけど、あなたと話ができてよかったです。訴えようかと思ったけど、止めました」。

 勝ち気なために、仕事で悪者にされたり、上手く生きられたなった妹も、34歳でガンで亡くなった。母は、「亡くなったら、全部お終い。生きていた意味なんて、何もない」と嘆いた。

「それは違うと思うよ。あの子にも、いい思い出がたくさんあっただろうし、きっと、人生を謳歌した時期もあるんだから。亡くなったら、すべてがチャラになるわけではないよ」。母は黙っていた。

 54歳でガンで亡くなった父は、死期が近づいた時に自宅療養に切り替えた。あたしをベッドに呼び、妹は勝ち気な反面、弱いところがあるんだから、姉さんである、おまえが守ってやれと言われた。

 妹もガンになる前、猛烈社員だったために、あたしと同じうつ病になり、病院に入っていた時期がある。あたしは、寝る間もないほど忙しかったので、お見舞いには、ほとんど行けなかった。

 父の遺言は、果たせなかったのだ。何もしてやれなかったんだから。ごめんね、Tちゃん。
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カエルのロビン

Author:カエルのロビン
フリーランスの記者&編集者。星野源と加瀬亮が好きといえばオシャレだと思っている。何歳からアラフィフか母親と協議中。数年分の旅行記と食べ歩き日記を順次アップしていく予定ですので、よろしくお願いいたします。★リンクフリーです。

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