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『三丁目の夕日』

IMG_7714.jpg『三丁目の夕日』より、もう少し昔の話です。母が5歳くらい時の話。祖父は、全国に2000人もの詩吟のお弟子さんを持つ前は、向島ミュージック倶楽部(MMC)という楽団を率いていた。

 祖父は今で言うバンドのボーカル。4〜5人で楽団を作り、中には女性もいる華々しい楽団だった。バタくさい(洋風な)顔立ちをした祖父は、美声を響かせ、それはそれは人気者だったという。

 練習はいつも、母の育った祖父の家。ドラムは叩くは、ギターは音を鳴らすは、いまでは近所迷惑だっただろう。

 隣は食堂だった。夏になって、夜に窓を開けて練習しても、食堂からも近所の人からも文句は言われなかった。

 それよりも、食堂には、練習の歌声を楽しみに、いわばBGMとして、聞きに来るお客さんもたくさんいた。楽団は、お祭りにも参加して、場を盛り上げていたという。おおらかな時代に、楽団はみなの娯楽だった。

 おおおらかな時代と言えば、母の三番目の兄はやんちゃで、荒川の土手でカニを捕まえてきては、線路に置き、ぺちゃんこにして、遊んでいた。母は幼心に、カニが線路にこすられて、銀色に光っていたことを覚えている。

 線路には、踏み切り番がいた。それでも、三番目の兄は、見つからないようにクギを持って行き、今度はクギを線路に十字に置き、ぺちゃんこにした。

 それで手裏剣を作り、壁に投げては、これまた遊んでいたという。踏み切り番に見つかっては怒られていた。

 山形の祖父の実家に帰れば、三番目の兄は、今度は川へ行き、バケツにたくさんのカエルを捕まえてきて、やはり、踏切に置き、ぺちゃんこにしていた。

 三番目の兄は、遊びの天才で、子分をたくさん率いて、ガキ大将だった。

 やはり、三番目の兄の話になるが、市川で大小の蛇をたくさん捕まえて、ポッケに入れて持って帰ってきたことがあるという。学校の理科室に持って行き、先生がアルコール漬けにして、標本を作った。

 三番目の兄は、ある時、大きなアオダイショウを捕まえてきた。歯を抜いたので、人を噛むことはなかった。

 それを長男は、面白がって、クビに巻き、友達の家によく見せびらかしに行っていた。ある日、自分たちが遊んでいた部屋の隣の部屋に置いておき、脱走して、大騒ぎになったことがあるという。

 下町とはいえ、そんな大蛇が脱走したら、みなが慌てるのも無理はないだろう。幼かった母は、大蛇がその後どうなったかは覚えていない。

 長男は、兄弟の中で一番背が低かった。5人兄弟の面倒を見て、いつもおんぶをしていたので、背が伸びなかったんだと大人になって笑っていた。昔は、上の子が下の子の面倒を見ていたのだ。

 二番目の兄は、母をおんぶして、よく遊びに行っていた。家の近所に大きな鉄球がぶらさがっていた。振り子のように揺らしては、みなで遊んでいた。

 玉を目一杯引っ張り、よし離すぞと言うと、玉が勢いよく飛んでいき、戻ってくる間にすり抜けて、スリルを味わっていた。

 二番目の兄もやろうとすると、母はギャーギャー泣いて、怖がった。「おまえが泣くんだよなぁ。おかげで、鉄球では遊べなかったよ」と思い出話になっている。

 祖父の家には、クロというメス犬がいた。愛嬌がよく、隣の食堂に行っては、みんなからおこぼれをもらって、食べていた。

 楽団は趣味で、モップの棒を作るのを生業(なりわい)としていた祖父は、トラックで、深川の木場に木材をよく取りに行っていた。クロは、トラックの後を追いかけるのが好きだったので、祖母が追いかけないように押さえていた。

 トラックが見えなくなったので、もう大丈夫とばかりに手を離すと、クロは猛ダッシュでトラックを追いかけていってしまったという。

 祖父は、バックミラーに必死で走るクロが映っていることに気づき、トラックに乗せてやり、連れて帰ってきた。

 保健所の人が放し飼いの犬をよく生け捕りにしに来た。針金の輪が付いた棒を持ち、犬の首にひっかけては、シュッと引き、首をキュッと締めて、一丁上がり。檻に入れて連れて行った。クロは保健所の人によく捕まっては、祖父に引き取られてきた。

 ある時わかったことは、愛嬌のよいクロは自ら捕まっていたという。シッポをフリフリし、保健所の人になついていたのだ。いまとなっては笑い話。

 おととし、長男が亡くなった。80歳近い、ほかの兄弟たちもずいぶん老けた。いつお迎えが来ても、おかしくないよという兄弟もいる。

『三丁目の夕日』ような、おおらかな時代に生きた、母の家族のお話。今日はこれくらいで、よしにしときましょうか。
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コメント

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Re: こんにちは

raffineさん、おはようございます。カエルのロビンです。

体調を悪くして、返信が遅くなり、すみません。

一年半であんなに拍手をいただけるなんて、うらやましい!

参考になりました。ありがとうございます!

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プロフィール

カエルのロビン

Author:カエルのロビン
フリーランスの記者&編集者。星野源と加瀬亮が好きといえばオシャレだと思っている。何歳からアラフィフか母親と協議中。数年分の旅行記と食べ歩き日記を順次アップしていく予定ですので、よろしくお願いいたします。★リンクフリーです。

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