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劣等生の自殺願望。

IMG_4916のコピー 高野悦子の『二十歳の原点』を読んだ十代の頃、自殺をしようなんて、ちっとも思わなかった。

 とはいえ、いままで一度も死のうと思ったことがないわけじゃない。二十歳よりもずっと前、小学校の高学年の頃、自殺しようと思ってた。

 とにかく劣等生だった。大好きな作文や絵を描くことは夢中でやって、校内で表彰されたり、コンクールで賞をもらったりする反面、算数、理科、社会、漢字の書き取り……といういわゆる“お勉強”がビックリするほどできなかった。

 遅刻も多かったし、忘れ物も多かった。ハンカチやちりがみも、いつも持ってなかった。爪切りの検査もひっかかってたなぁ、そういえば。

 劣等生だという意識はあったものの、他の子と同じようにちゃんとしようとは思わなかった。反抗しているわけではなく、単に興味がなかったのだ。

 それが変わったのは高学年になってからだ。授業中に先生に当てられて「わかりません」と答える自分をひどく恥ずかしく思うようになった。その頃、好きな男の子ができていた。

 自殺しようと思ったのは、その頃だ。
 
 あたしが好きになった子は、クラスのというより校内きっての優等生だった。勉強もできて、スポーツもできるN君の回りには、いつも友達が集まっていて、その輪の中心でN君はいつも楽しそうにしていた。

 その様子を輪の外から見ていたあたしは、徐々に「今度生まれ変わったら、あんな風になろう。今度はちゃんと勉強して、いろんなことに詳しくて、そのおかげでたくさんの友達ができて、みんなを笑わせられるような、そんな人に」。

 とくに信じている宗教はないけれど、子供の頃から今に至るまで、なぜか「輪廻」のようなものをココロのどこかで信じている。自殺は、そんなところから思いついたものだった。

 大好きなN君を見ていると、あたしの生き方って間違ってたんじゃないだろうか。好きなことばっかりやってちゃダメだったんだ、きっと。早くイチからやり直したい。

 そう、小学校1年生あたりから。いやもっと前、物心がつく前からやり直したい。毎日をちゃんと生きて、一度教えられたことは忘れないようにしよう。あたしは、せっかくの人生を今までいい加減に過ごしてきちゃったんだ。

 小学生の分際で、「生き方」だの、「人生」だのなんて、いまにして思えば笑ってしまうけれど、当時は本気だった。

 その考えが加速していったとき、「自殺しよう」と思った。

 このままでは、あと何十年も生きなくてはならない。気に入らない“土台”のうえにさらに年月を重ねるのが無意味なような気がした。

 人生は、ちゃんと生きれば、もっともっと素敵なものに違いない。だからこそ、いますぐにでも生まれ変わって、人生をやり直したい。

 実家は薬屋だった。父も母も、毒物劇物の取り扱い免状を持っていたので、店にはカギがかかる戸棚に、いつも「硫化~」「塩酸~」なんて薬が置いてあった。

 雑草除去や害虫駆除、清掃用などとして需要があったようだ。

 あたしはカギの在処(ありか)を知っていた。親もまさか、小学生のあたしがその戸棚に興味を持つとは思っていなかったのか、とくにヒミツの場所に隠してあったわけではなかった。

 ある夜、ベットを抜け出し、住まいに隣接した店に忍び込んで、その戸棚を開けた。

 茶色い遮光瓶に入った薬が3本入っていたのを憶えている。どれを飲めば死ねるだろう。できるだけ苦しまないのがいいけれど……。

 3本をとりあえず店の床に並べ、自分もパジャマのまま床に腹這いになって、薬のラベルの注意書きを読んだ。読めなかったり、意味がわかならい漢字ばかりで、どの薬にするか迷いに迷った。

 1本を取り上げては、これは飲んでも、ノドとかがただれて痛い思いをするだけだったらヤダな……。

 こっちはどうだろう、「硫化」って書いてあるから、きっと強い薬に違いない……。小一時間はそんなことをしていたんじゃないだろうか。

 でも、結局、キャップに手をかけることはなかった。どれにもシュリンクされたビニールのカバーがかかっていた。

 腹這いになった体を裏返して、店の床に大の字になり、天井を眺めた。

 死んだら本当にもう一度生まれ変わるんだろうか。

 また、自殺した場合には、もう人間には生まれ変わらない、なんてことにはならないだろうか。

 寄るべき宗教を持たないあたしは、いろいろと考えた。そして、死ぬのを止めた。輪廻を信じ切れなかったからだ。

 1980年代に『フェリスはある朝突然に』という映画があった。マシュー・ブロテリックが主演のヤツだ。映画の中にはなかったけれど、あの原作ではこんなくだりがあった。

 主人公のフェリスは、冴えない友人の前に真っ直ぐな長い線を書き、たしかこんなことを言う。

「いいかよく聞け。あるとき、“この世”が始まった。この線の始まりの部分だ。それから気の遠くなるような年月が流れて、この地点でお前が生まれる。お前が生きてる時間なんて、点以下の長さだ。そしてお前が死んだ後は、この世が終わるまで、お前はずーっと死に続ける。いまは、この世の“舞台”に上げてもらってる貴重な時間なんだ。人生は一度きりなんだぜ。もっと楽しめよ」。

 原作を読んだのは中学に上がってからだった。あのとき、死ななくて本当によかった(笑)。
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プロフィール

カエルのロビン

Author:カエルのロビン
フリーランスの記者&編集者。星野源と加瀬亮が好きといえばオシャレだと思っている。何歳からアラフィフか母親と協議中。数年分の旅行記と食べ歩き日記を順次アップしていく予定ですので、よろしくお願いいたします。★リンクフリーです。

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